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船員になるには Vol 1

2020/06/02 15:59:33  船員ドリーム
 時々「船員にはどうしたらなれるん?」と聞かれることがありますので、今回から何回かに分けて「船員になるには」特集(笑)をしてみたいと思います。
なお、船にあまり詳しくない方を対象に、できるだけ簡単に(←これが一番難しい汗汗)噛み砕いて書いていきますので、「玄人受け」はしないと思います。そこんとこよろしくお願いします。
また、主に内航貨物船にフォーカスした話になりますし、私自身は現場から離れて長いので、トンチンカンな話になるかもわかりませんが、そんときゃ鋭いツッコミを入れてくださいね。

今回は、まったく未経験だけど、とにかく「船員」になりたい場合

ただ単に、職業として「船員」になるには、そこまで難しいことではありません。
要するに内航海運の会社に応募して。「未経験・無資格ですが、採用してもらえますか?」と言って、「OK」の返事があれば、雇用証明書をもらい、近くにある運輸局や運輸支局・海事事務所で船員手帳を作ってもらい、健康診断さえ受ければ。いっぱしの「船員」として乗船できます。

ただし・・・

船員不足が深刻な今でさえ、「まったく未経験」の場合、ぶっちゃけそこまで求人数は多くありません。その理由は後で書きます。
それでも「司厨員」(要するにコックさん)は、それなりの求人数があり、また、大型船の一部にも未経験者の求人が若干あるようです。

「まったく未経験」と「免状はないけど船の経験がある場合」の決定的な違い

少し専門的になりますが、大事なところなので読んでみてください。

船員さんの労働保護や航海安全、規律を定めている、「船員法」という法律に、

〇部員(免状を持ってない人)が航海当直(要するに船を運航すること)する場合は「航海当直部員」の資格がないとダメよ。とかいてあり、この資格は6か月以上の乗船履歴が必要です。となっています。

また、この法律から派生している「航海当直基準」というルールがあり、船を運航する場合の決まり事が書いてあります。
その一部を簡単に抜粋すると、

〇見張りする人(船はでかいので、進行方向など、あっちこっちを見渡す)と、操舵する人(船を操縦すること)は同じ人じゃだめよ。
〇見張りは複数の人でやってね
〇ただし、操舵位置(要は船のハンドルの場所)で周囲の状況が見渡せる小型船(原則700トン未満)の見張りは一人でいいよ
〇すぐに呼び出せる補助者が船内にいれば、見張りは単独でもいいよ
〇でも当直するのは、最低一人は6級海技士(運航する資格)が必要だよ

って書いてあります。

ってことは、

原則として、船を動かすには、見張り要員2人と操舵要員1人が船の運航をしなければならないけど、
原則700トン以上の船は2人、それ以下の船は1人で航海当直(船の運航)ができることになります。

ただし、最低一人は6級海技士以上の資格を持った人が運航しなければならない訳ですから、一人で当直できる700トン未満の船は、免状を持ってる人しか当直できないことになります。
また、700トン以上の船の場合にも、1人は6級海技士以上の免状を持っている人で、もう一人は「航海当直部員」の資格が必要となります。

ということで、まったく未経験の方を内航船の会社が採用するという事は

1、700トン以上の船を所有し、運航している会社の場合でも、少なくとも6月間は「運航要員」としては使えず、採用しても、運航以外の甲板作業などを経験させたのち、運航要員に養成していく。
2、所有船が700トン未満の船である場合には、海技免状を取得することを前提として採用し、数年間の養成期間が必要

という事になります。

こうしたことから、まったく未経験の方を小型船が受け入れるというのは少なからずハードルが高いため、専門教育機関を卒業した新卒生(有資格者)や、内航船の労働市場の中で採用するケースが多くなってしまいます。
したがって、内航船員の数そのものが減少していることにくわえ、少子高齢化による船員供給量が少ない現状は、小型船のオーナーにとっては大変厳しい環境になっています。

次回以降、未経験の方が船長・機関長資格をめざす方法をご紹介します。

(注意)
船の仕事には大まかに分けて、船を運航する「甲板部」、メインエンジンや発電機などを管理する「機関部」がありますが、今回は「甲板部」の内容だけ書いています。「機関部」の話は次の機会に書いてみます。



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