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サイレントタイムのはなし

2020/04/10 14:03:17  船のあれこれ

「サイレントタイム」って聞いたことありませんか?

元青函連絡船「八甲田丸」 | サイレントタイムのはなし | 中国地方海運組合連合会|中海連

元青函連絡船「八甲田丸」

この言葉がクローズアップされたのは、1995年の「阪神・淡路大震災」の時でした。
がれきに埋まった被災者の助けを求める声が、飛び交う報道ヘリや重機の爆音にかき消されて聞こえない・・・

時間を定めて一切の音を消し、助けを求める小さな声に耳を傾ける時間を確保しよう。

これがサイレントタイムです。


画像は
https://minkara.carview.co.jp/userid/173494/blog/35096256/からいただきました。


船の世界では古くからおこなわれている習慣でした。

言うまでもなく船は陸上を遠く離れて航行します。当然有線通信はできませんから無線が唯一の通信手段となります。
携帯電話・スマホといえども中継局から10数キロも離れたら役にたちませんし、灯火や旗についても肉眼で見える範囲でしか使えません。汽笛なども限界があります。

そのため、船の通信は無線の発達とともにありました。
1899年、マルコーニが初の国際無線通信に成功して以降、わずか10年後には難破した「スロバニア号」による遭難信号(当時はSOSでなくCQDという信号)が発せられています。

しかし、当時の無線の世界では現在のようなルールは存在せず、まさに「無法地帯」。

客船では乗船客のリクエストによる電報を捌く作業に忙殺され、重要な無線通信は二の次。タイタニック事故は氷山の接近情報が正しく伝わらず、事故の一因になったといわれています。

こうしたことから、1912年のタイタニック事故後、無線運用のみならず、船舶の安全にかかわる国際的なルールを統一しようとする機運が盛り上がり、現在の条約の原型 = 海上における人命の安全に関する条約「1914年SOLAS条約」が制定されました。

しかしこの条約は5カ国のみの批准にとどまり、発効には至りませんでした。
それはなぜか。
同年、第一次世界大戦が勃発したからです。(人間って本当に愚かです)
その後、1929年に初の国際基準として統一され、幾度かの変遷を経て「1974年SOLAS条約」として現在のルールが確立されています。

またもや話が逸れてしまいましたが・・・

文章を書いていくとどんどん話が逸れてしまうのが悪い癖です(笑)
話をもとに戻しますが、画像をご覧ください。この画像は旧青函連絡船の「十和田丸」の無線室ですが、時計の15分~18分の3分間、45分から48分の3分間は赤く塗りつぶされています。
これは、「この間は無線送信を控えて、ひたすら聞くことに集中しよう、もしかしたら助けを求めるSOSが発せられているかもわからない。」というための時間です。

長らく通信手段の主力であった「モールス信号」も、その運用には特殊な技能が必要であることや、人工衛星機器の発達から、1985年6月のSAR条約「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」が発効し、これに伴いGMDSS(Global Maritime Distress and Safety System:全世界的な海上遭難・安全システム)が導入されました。
(現在モールス信号はアマチュア無線と漁船の一部で使用されるのみとなっています)

現在では地球上のどこにいても、ひとたび海難が起きれば、「衛星イーパブ」という装置から極軌道衛星に救難信号が飛び、たちどころに近隣を航行する船や海上保安機関に速報が入り、救助される仕組みとなっています。
また、それにともない、「サイレントタイム」も現在では行われていませんし、こんな時計も今ではインテリアの中でしか存在しません。
現在では「通信士」が乗っている船は限られた特殊な船ですが、こうしたこと一つをとっても、多くの犠牲のうえに現在の安全規制が成り立っていることがわかります。


ちなみに、日本山岳協会でも遭難者のために1日3回のサイレントタイムを設けているそうです。


今日の文章は長くてスミマセン(#^^#)

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